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【カズ中西のもりまち安全運転研究所】6 動物の飛び出しをより早く発見して危険を回避
2023.06.28 見るできごと

郊外ツーリングで脅威なのは、野生動物との衝突。伊豆でいえば、バイクとシカの衝突は、10年ほど前から急増したように思います。相手が動物だから避けられるか否かは時の運という人もいますが、観察力を強化すれば躱(かわ)せる可能性は格段に高まりますね。

1.人が作った野生の王国?

戦後の高度成長期からバブル期を経て現代へ。山々は切り開かれ、人の住む地域が拡大しました。しかし、人口減少と連動するかのように地方の過疎化が進み、移動しやすくなった土地を野生動物が闊歩する。その是非をここで論ずる気はないですが、現実問題として郊外ツーリングで動物と接触する事故が増えたように思います。別の見方をすれば、野生動物が人の生活圏まで近づきやすい環境が、事故を引き起こしているのかもしれません。ならば、我々人間が動物との接触を避ける知恵を働かさなければならない。こんな環境にしやがって~と、先人の人々に文句を言ってもシカタナイですからね。

ここは、伊豆市の早霧湖(さぎりこ)近くの分譲別荘地。定住する人間よりも、生息する鹿の頭数が圧倒的に上回っています。右を見ても左を見ても、道路上にも鹿。バイクが近づいても、逃げるそぶりを見せません。まさに人が作った野生の王国です。

2.止まれる距離とスピードの関係

運転免許の取得時に勉強したと思いますが、走っているバイクが止まるまでには、ある程度の距離が必要です。空走距離+制動距離=停止距離というもので、40km/hで走行している場合は、停止するまでに約22mを要します。細かいことを言えば、路面ミューや路面の傷み具合、タイヤの残溝量やブレーキ性能などの機械的な要素と、キチンとブレーキングができるという運転技能が重要。空走距離に関する反応(反射)時間は、人間の場合0.3~0.7秒だとかなり良いほうで、公道では1秒くらいだと言われます。逆に言えば、スピードと停止距離の関係を頭に入れておけば、走っている速度からどれだけの距離分、前方の安全確認をすればよいかがイメージできます。例えば60km/hで走行中、22m前方にシカが飛び出して来たら衝突は避けられないでしょう。スピードの高まりに合わせて、安全確認する範囲は遠くにワイドになると意識して、異変に気付く観察能力を高めれば、最悪の事態を避けられる可能性が高まります。

シカの飛び出しを想定した実験を企画。デイトナの総力を挙げてダミーのシカを製作いただきました。現実には、こんな可愛らしい表情をしておらず、キッとにらんできますね。

40km 50km 60km

 

40㎞/h、50㎞/h、60㎞/hの走行時、どの地点でシカを発見したのなら衝突を避けられるか?手前で止まれるか?その距離感を表しています。60㎞/h時は、意外に距離があるなとイメージしてもらえれば良いかと思います。

※この様子はブログ文末に掲載の動画でご覧いただけます。

 

実際に伊豆スカイラインを走ってみて、シカの飛び出し注意の看板に気づいた距離感を表しています。この時の速度は50㎞/hです。この地点でシカに気づけば、ブレーキングは十分に間に合います。

カーブのブラインド区間を過ぎて、直線路になりかけた地点で看板を発見。速度は50㎞/hです。この距離感だと、ブレーキ性能よりも運転技能が結果を左右します。

カーブのブラインド区間を過ぎたあたり、草に隠れて見えにくくなっていた看板の距離感です。50㎞/h時に猪の画を認識できる地点からだと、高性能なブレーキ性能、それをフルに使いこなせる運転技能を要すると思います。つまり、先の見えにくい場所では、速度を抑えて走らせることが大切だとわかりますね。

3.アテになる標識と看板

前方に危険がある場合、サーキットならばフラッグやLEDシグナルでお知らせしてくれます。サーキットでは、オイルが出ていて危ないとか、雨が降り始めて滑りやすい状況であることも、フラッグやシグナルから知ることができますので、公道より格段に安全だと思います。では、公道の場合にそういうお知らせは無いのか?実は、過去に動物との大きな衝突事故が発生した場所には、標識が設置されていたり、立て看板が置かれていることが多いです。特にイラストが可愛らしい看板は、観光客のためのオブジェみたいなものかな?くらいの認識かもしれませんが、そこが動物の通り道だったりするので、危険回避のアテになると思います。

郊外や山奥に行くほど設置されていることの多い標識です。道路を挟んだ両側に獣道があることを知らせていますね。

静岡と山梨で見つけた看板です。夜間でも気づきやすい配色となっています。これは単なる飾りではなく、ここで動物との重大な衝突事故が発生したことを知らせています。

前方が下り坂となっている地点で看板を発見。近づいてみると、シカが通りやすい地形となっていました。人間も然りですが、動物も苦労なく通れる場所を選んで移動しています。また、ここでは坂を上ってくる対向車にも注意しなければなりません。過去にここで追い越しをかけきれず並走したバイク2台と対向の1台、計3台のバイクが衝突。ドクターヘリが2機も出動しなければならなかった重大事故現場でもあります。ブジカエルための参考になれば幸いです。

動画で見る

●鹿を発見してから停止までの操作を、デイトナテストコースで試してみた動画です。

 

【カズ中西のもりまち安全運転研究所】動物の飛び出しをより早く発見して危険を回避

シカの飛び出しで止まれるか検証

デイトナより

先日、バイクの死亡事故で、鹿との衝突により転倒したのではないかというニュースが報じられました。そのため、今の時点でこの記事を掲載することは配慮に欠けてしまうかもしれないと考えました。

 

しかしながら、鹿の飛び出しが6月~7月に多く発生していることを考慮し、カズさんを始め社内でも相談のうえ、あえてこの時期に公開させていただくことにいたしました。

 

鹿に限らず、動物の飛び出しの状況を「知っている」ことで危険を回避できることがあるかもしれません。

事故に遭われた方のご冥福をお祈り申し上げるとともに、バイク乗りの皆様が、長く安全にバイクライフを過ごせることを願っています。

 

 

ライターProfile

カズ中西

モーターサイクルジャーナリストを始め、イベントのMCやラジオDJなどマルチに活躍! 伊伝株式会社の広報担当であるとともに伊豆スカ事故ゼロ小隊の中隊長、静岡県二輪車安全運転推進クラブ伊豆地区会長など、積極的に交通安全推進活動を行っている。

※文中に記載の品番/価格は、記事作成時のものです。

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